Rimona Francis

リモーナ・フランシス

リモーナ・フランシス

話は大体2000年にまで遡る。

フューチャージャズという、今では少し寒気のする単語のジャンルに開眼した。それまでは、プリンスに代表される、ほとんどソウル/ファンク系一辺倒だった自分の、多少なりとも偏ったその聴き方を少し見直す時期に指しかかっていたノダ。

とにかく基礎知識がないため、コンピレーションで知識を吸収する。Compost RecordsのGlucklichシリーズや、Future Sound of Jazzシリーズなどは良い参考書ならぬ、参考CDだった。そして、レアグルーヴなどという単語も覚え、今なお聴いても時代を感じさせない、まったく色褪せない、ヨーロッパ系――ここらへん、やはり偏っているのだが――の旧譜を積極的に聴くようになる。

そこで出会ったのが、旧西ドイツ、MPSレーベルの各種音源を収録したコンピレーション、"Between or Beyond of Black Forest: MPS Classics Vol.2"だ。その中で、リモーナ・フランシスというボーカリストの"Blugarian Beans"に耳を打たれた。初めて聴き、衝撃を受け、それから多少の熟成期間を経て、おそらく3年前くらいから今まで、この曲が収録された彼女のアルバムをずーっと探していたのだ。

Vol. 2-Mps Classics

Vol. 2-Mps Classics

アナログでの再発盤は、結構手ごろな値段で見かけたことがあったのだが、1998年に国内で再発されたCDとなると、その入手には気長なインターネット検索と時の運とが要求される。この作品はLPでなく、どうしてもCDで手に入れたかった。というよりも、おれはCDでの再発盤があった場合、どうにかしてCDで手に入れないと気がすまないのである。

ここまで来るともはや執念だ。コンピレーションでいつでも聴けるからいいや、では終わらない。CDで音楽を聴きたい欲求よりも、CDという物理的媒体を手に入れたいという物欲、所有欲以外の何者でもない。

そして、やっと手に入れることができた。リモーナ・フランシス。前のオーナーはよほど几帳面な方だったらしく、ほぼ新品とも言える良好な保存状態。コレクターとしてのシンパシーを感じずにはいられない。二重の喜びだ。

肝心の作品の内容だが、変拍子のオンパレード。変拍子マニアにはたまらない。かなりプログレッシブだ。リモーナと、収録曲のほとんどの作編曲を担当した彼女の夫、Stu Hacohenの故郷がブルガリアということもあり、ブルガリア民謡の影響が色濃くあらわれている。

1. Bulgarian Beans
2. Colours of Exctiement
93年リリースの"トーキン・ジャズ Vol.1"にも収録されたらしい。本作の中ではもっともポップでノレる曲ではなかろうか。何故ならばこの曲は変拍子で構成されていないからだ。
3. Escape
4. Debka Druze
5. Eulipia
6. Five and Nine
変拍子マニアにとっては一番のキラートラックになるであろう曲。5/8拍子一小節、9/8拍子ニ小節が、交互に繰り返される。文章で書くとさも複雑そうに思えるんだが、素直にこの変態的拍子が受け入れられるところがこの曲のすごさ。
7. Gingi

1978 MPS Records, Villingen